過去にアメリカに勤務していたことで、現地から年金を受け取ることになったケース。
日本の年金とアメリカの年金と、確定申告の注意点、ポイントをお伝えします。
日本での年金受給
米国の年金制度(Retirement)は、ソーシャル・セキュリティ・ベネフィット(Social Security Benefits)の一形態です。
ソーシャル・セキュリティー(Social Security)とは、米国政府が提供する社会保障制度のことです。
受給については、在日米大使館・領事館で情報提供しています。
私自身、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーに記載ある名前を(改姓)変更するため、東京赤坂にある大使館に行って手続きしてきました。(その時の様子は後半で)
ソーシャル・セキュリティーの申請資格と方法は、米国で働いた年数(10年)によって異なります。
日本での税金・確定申告
日本に住んでいる「居住者」が、外国の公的年金を受給した場合、原則として日本の確定申告が必要になります。
公的年金等は、年金の収入金額から公的年金等控除額を差し引いて所得金額を計算します。
この雑所得となる主な公的年金等は、次のものです。(1) 国民年金法、厚生年金保険法、公務員等の共済組合法などの規定による年金
(2) 過去の勤務により会社などから支払われる年金
(3) 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金
(4) 外国の法令に基づく保険または共済に関する制度で(1)に掲げる法律の規定による社会保険または共済制度に類するものに基づいて支給を受ける年金
国税庁ホームページ
上記にあるように、「雑所得」として「公的年金」扱いで確定申告します。
公的年金の雑所得の計算
公的年金の雑所得のの計算は、
1、公的年金等の収入金額(日本とアメリカからの年金収入)
2、公的年金等控除額(合計所得金額と、年齢65歳未満と65歳以上の別で変わる)
3、1-2=公的年金等に係る雑所得の金額
上記の1には、日本国内から受給している厚生年金・国民年金のほか
アメリカからのソーシャル・セキュリティ・ベネフィットを合計します。
4番目の「所得税法第203条の3第四号に規定する公的年金等」として申告します。
アメリカからの年金は申告不要にならない
平成23年分以後、年間の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年に「公的年金等に係る雑所得」以外の所得金額が20万円以下のときは、確定申告が不要になりました。
しかし、アメリカの年金は源泉徴収の対象となっていませんので、申告不要の対象ではありません。
基本的に確定申告が必要になります。
外貨の換算レート
アメリカの年金収入について、現地の銀行口座へなど外貨で支払を受けたときは、支払を受けた時の電信売買相場の仲値(TTM)で日本円に換算して、支払金額に1年間の金額を合計します。
ただし、日本の銀行口座に入金されたときは、入金された金額をそれぞれ合計します。
アメリカへの申告義務について
日本に住んでいて、アメリカの年金を受け取った場合は、日米租税条約により受給者の居住地国の課税になります。
したがって、アメリカの市民権・グリーンカードがある方以外は、アメリカに申告する義務はない、です。
日本国籍があり日本に住んでいる方は、何もしないとアメリカ国内から年金を受給する際に30%の税金が天引されます。
これを回避するために「W-8BEN」という書類を、支払者(IRSではない)に提出する必要があります。※
提出しないと、日本で外国税額控除が取れないので、アメリカに申告して還付を受けるような面倒な手続きになります。
※2024年9月20日追記:
アメリカで受給中で日本に帰国したケースや、日本に住んでいてこれから受給申請するケースなど源泉徴収のケースは変わります。
「W-8BEN」IRSホームページ
アメリカ大使館でのソーシャルセキュリティーナンバーの手続き
ソーシャル・セキュリティー・ナンバーに記載している氏名(姓)を変えたいと思い、東京赤坂のアメリカ大使館に行ってきたときの話です。
事前に予約をし、その予約を書いた紙を持参して大使館に行きました。
というのも、敷地内に入るまでに、セキュリティチェックの砦が何か所もあるので、紙をもって見せるのがスムーズです。
外から建物でさえ写真撮影できませんし!
自分の証明書になりそうなものを各種持参し、名前(姓)を変えてもらいました。
ただ、カードの再発行はしないとのことです。
まとめ
「申告義務がある」と「納税が発生する」は一致しないので、専門家として説明が難しいところです。
ちなみに、アメリカにおいて、掛金払込時に控除が取れて、受け取り時も優遇されるものでIndividual Retirement Arrangements (IRA/アイラと呼ぶ)があります。公的年金ぽいですが、金融機関等が窓口になっているものなので、公的年金の扱いにならないと考えます。
また、この記事では一般的な公的年金をもとに記載していますので、年金の種類、受給者によっては課税国・申告方法が異なります。